MSやPFNのAI技術最新情報からPost Kまで ― DLLAB DAY 2018 基調講演レポートイベントから学ぶ最新技術情報

MSのAI技術の最新情報として「Windows MLアーキテクチャ」や「Azure Sphere」「Project BrainWave」など、PFNの事例や「Chainer MN」「Menoh」など、さらにABCIや「Post K」など、基調講演の注目ポイントをまとめる。

» 2018年06月29日 05時00分 公開
[塩田紳二]

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「AI・機械学習のイベントレポート」のインデックス

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 6月21日、都内でDLLAB Day 2018「深層学習を使いこなす日」が開催された。同イベントは、Deep Learning Labが1周年記念イベントとして行ったもの。Deep Learning Labは、マイクロソフトとPreferred Networksの協業として生まれた「ディープラーニングに関連する、開発事例や最新技術動向を情報発信するコミュニティ」(Deep Learning Labサイト)である。イベントは、基調講演とセッションから成るが、ここでは基調講演の模様をレポートする。

 基調講演を行ったのは、以下の3氏(登壇順)。

  • 榊原 彰 氏: 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)マイクロソフト ディベロップメント株式会社代表取締役 社長
  • 西川 徹 氏: 株式会社Preferred Networks創業者 代表取締役社長 最高経営責任者
  • 松岡 聡 氏: 理化学研究所 計算科学研究センター センター長

 当初、金出武雄氏(カーネギーメロン大学)が登壇予定だったが、先の関西地区の地震によりご自宅が被災されたとのことで、急きょ、松岡氏が登壇することになった。当日、金出氏は、Skypeであいさつを行った。

日本マイクロソフト榊原氏の講演

 最初に講演を行ったのは、日本マイクロソフトの榊原氏(図1)。

図1 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)マイクロソフトディロップメント株式会社代表取締役社長 榊原彰氏 図1 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者(CTO)マイクロソフトディロップメント株式会社代表取締役社長 榊原彰氏

 「Intelligent Cloud, Intelligent Edge & Real-time AI」とし、マイクロソフトのAI製品関連を中心に講演を行った。同社は、4月のハノーバーメッセに合わせ、Azure、IoT関連の製品を発表した。また、年内に登場するWindows 10の次期アップデートでは、機械学習を利用するための「Windows MLアーキテクチャ」(図2)を搭載する予定だ。

図2 次のWindows 10には、機械学習用のAPIなどが搭載される予定だという 図2 次のWindows 10には、機械学習用のAPIなどが搭載される予定だという

 同社は、Azure上で機械学習を利用する「Intelligent Cloud」と、それにつながる「Intelligent Edge」を作り、そこにWindows 10 IoTをベースとするさまざまなIoT機器を動作させ、そこでも機械学習の推論を可能にできるようにするという。また、このために新たに「Azure Sphere」(図3)と呼ばれる組み込み系のプラットフォームを提供する。これは、Cortex-Mクラスの組み込み向けの小さなプロセッサ向けで、Linuxカーネルを応用したものだという。マイクロソフトは、このAzure Sphereを、「Windows 10 IoT Core」(スマートフォンなどに使われているアプリケーションプロセッサクラスを対象)、「Windows 10 IoT Enterprise」(PCクラスのプロセッサ)と合わせることで、広範囲なIoTデバイスをカバーし、「Intelligent Cloud」、「Intelligent Edge」と接続する構想を持っている。

図3 マイクロソフトは従来のWindows 10 IoT(CoreとEnterprise)に加え、Azure Sphereと呼ばれる組み込み向けの小規模プロセッサ用のOSを開発した 図3 マイクロソフトは従来のWindows 10 IoT(CoreとEnterprise)に加え、Azure Sphereと呼ばれる組み込み向けの小規模プロセッサ用のOSを開発した

 また、クラウド側での機械学習の高速化については、ソフトウェアで構成を変更可能な半導体デバイスFPGA(field-programmable gate array)を使った「Project BrainWave」(図4)を紹介した。

図4 Project BrainWaveは、インテルのFPGAデバイスを応用したハードウェアDNNエンジン 図4 Project BrainWaveは、インテルのFPGAデバイスを応用したハードウェアDNNエンジン

 マイクロソフトは、Azureを構成するサーバーにFPGAを搭載(図5)し、これを利用して機械学習を高速化する。Project BrainWaveでは、FPGA同士が直接ネットワークに接続しており、複数のFPGAボード(Catapultと呼ばれる)を連携させることが可能。マイクロソフトによれば、グーグルのTPUよりも5倍も低いレーテンシー(遅延)が実現できたという。

図5 マイクロソフトがAzureで標準的に利用しているサーバーには、Catapultと呼ばれるカードが搭載され、CPUとは独立してネットワークを介して処理を行えるようになっている(CPUと接続しているのは、FPGAへのアルゴリズムの書き込みの必要があるため)。 図5 マイクロソフトがAzureで標準的に利用しているサーバーには、Catapultと呼ばれるカードが搭載され、CPUとは独立してネットワークを介して処理を行えるようになっている(CPUと接続しているのは、FPGAへのアルゴリズムの書き込みの必要があるため)。

Preferred Networks西川氏の講演

 次に登壇したのはPreferred Networks社の西川氏(図6)。

図6 株式会社Preferred Networks創業者 代表取締役社長 最高経営責任者 西川徹氏 図6 株式会社Preferred Networks創業者 代表取締役社長 最高経営責任者 西川徹氏

 自社の概要を説明した後、Automotive、Healthcare、Factory Robotが主要なビジネスであるとの解説を行った(図7)。これまでに行ってきた協業の例として、正常状態の機械の動作時の振動波形だけを学習させて、異常検出を行ったことや工作機械の熱変位補正をAIで予測、加工精度を40%向上させたことなどを示した。

図7 同社の注力領域は、Automotive、Healthcare、Factory Robotだという 図7 同社の注力領域は、Automotive、Healthcare、Factory Robotだという

 また、NTTコミュニケーションと国内最大のGPUクラスター(図8)を構築、1024基のNVIDIA Tesla P100で分散深層学習パッケージChainer MNを動作させている。これにより、これまで30分以上かかっていたImageNet-1Kの学習を15分で終了できるとした。

図8 Preferred Networksは、NTTコミュニケーションと協力して1024基のGPUが稼働するGPUクラスターを構築 図8 Preferred Networksは、NTTコミュニケーションと協力して1024基のGPUが稼働するGPUクラスターを構築

 また、新しい試みとして、ONNXで記述されたモデルで高速推論を行う「Menoh」(図9)を発表した。

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